日本語指導担当者の役割

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日本語指導担当者の役割

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1)児童生徒への教育活動

目的・ゴール

周囲の子どもたちや大人たちとの人間関係を良くする日本語力、学習活動にスムーズに参加するための日本語力が身に付くような指導をしましょう。

言葉は道具

外国人児童生徒への日本語指導は、日本人に同化させるためのものではありません。日常生活はもちろんのこと、児童生徒が自分のアイデンティティを大切にし、自信を持って自己表現できるような日本語力を身に付けさせることが、子どもの人間形成にもとても重要です。

「居場所」を広げるための支援

外国人児童生徒がまだ十分に日本語が習得できていない段階では、日本語指導担当者は、児童生徒自身が置かれた状況から生じる不安や恐れ、あるいは葛藤などを、周囲に伝える代弁者としての役割を担います。ひいては児童生徒が周囲との関係を築き、「居場所」を広げていくための支援となります。

児童生徒の「言葉の力」とその把握

実際に日本語指導をする場合には、受け入れ時に通訳者を付けた面接などを実施し、それぞれの児童生徒の生活や学習の状況、適応状況、学習への姿勢や態度などを把握し、個々に適した指導を行うことが大切です。→児童生徒個票

また、児童生徒の「言葉の力」をどう把握するかが大きな問題となります。転入してきた児童生徒が、どの程度の日本語の力を持っているのかを把握した上で日本語指導の計画を立てる必要があります。まったく話せない子どもは一からの日本語指導となりますが、ある程度話せる子どもは、学年相当の学習言語能力がどのぐらい備わっているかを調べる必要があります。→学習言語習熟度診断テスト

生活言語能力と学習言語能力

「日常会話はできても、授業の学習についてこられない」という声をよく耳にします。この2つの能力は、一般には「生活言語能力」と「学習言語能力」と呼ばれています。前者は、日常的な会話をする能力で、1年~2年程度で習得すると言われています。教師による支援も必要ですが、ある程度は、普段の生活の中で自然に身に付きます。一方、後者は、教科等の学習場面で求められる能力で、習得には5年~7年かかると言われています。生活の中で身に付くことはあまり期待できず、日本語指導者が中心となった計画的な支援が必要になります。

友達と楽しそうに話している絵

友達と会話はできるけれど…

授業の内容がわからなくて困っている絵

授業で使われる言葉が分からない…


適応支援、学習指導・支援

生活面の適応、日本語学習、教科学習などの指導や支援を行います。指導形態は主に、在籍学級以外の教室で指導を行う「取り出し授業」と、在籍学級での授業中に日本語指導を担当する教師や外部からの日本語講師・通訳者などが入って、対象の児童生徒を支援する「入り込み授業」があります。児童生徒や学校の実情に応じて、いつ、どの教科で、どのような形態で指導を行うのかについて計画を立てましょう。

取り出し授業の絵

取り出し授業

入り込み授業の絵

入り込み授業

学ぶことの意味や楽しさを味あわせる工夫

ゲーム形式の指導を行う絵

成人の学習者と異なり、児童生徒の場合は、日本語学習に目的意識を持てない場合が多く、学習内容が定着しないことがよくあります。学習意欲を損なわせないためにも、同じ学習項目に留まって暗記を強要しないようにし、指導の仕方に工夫をしましょう。目で見てすぐに理解できる教材を用意したり、子どもの興味が持続するようなゲームを取り入れたりして、同じことを反復していると気付かせないような工夫をすると効果的でしょう。→日本語指導向け資料

日本語指導開始後の上達度の把握

指導を開始してからは、児童生徒の在籍クラスでの授業中の観察、発表やスピーチ、作文などの成果物によって、日本語の上達度を把握するとともに、取り出し授業の様子を連絡カードなどに書いて定期的に担任に伝えることにより、児童生徒の日本語学習の様子を担任にも把握してもらうと良いでしょう。

在籍学級の学習へ関連付け

日本語指導に期待されることは、児童生徒の教科学習に関連性を持たせることです。例えば、取り出し授業で、在籍学級での活動で利用する表現や語彙を取り入れたり、在籍学級で使用している教科書をリライト(やさしい表現に直したり、ルビを振ったりすること)したりして、その子どもに合わせた指導をすることが、彼らの学習参加を支援することになります。日本語指導担当者には、日本語の学習と在籍クラスでの学習をつなげるパイプ役、あるいはコーディネート役を担うことも期待されます。


2)校内の連携・共通理解

学級担任との連携

学習面では、内容を関連付けることができるよう、学級担任と情報交換を行い、連携を図りましょう。

他の教職員等との情報共有

学校内で外国人児童生徒に接する教職員と、児童生徒の様子を伝え合いましょう。外国人児童生徒の日本語習得や他の教科の学習の状況、家庭の様子を知ること、また母文化について把握し、児童生徒を多面的に捉えることは、より適切な対応方法を考えるヒントになります。また、日本人の児童生徒とはどのような点で異なるのかを認識することが、望ましい指導・支援につながります。→子どもたちの国を知ろう


3)外部機関・地域との連携・共通理解

教育委員会の担当者などとの連絡

基本的に、教育委員会担当者などとの連絡窓口は管理職ですが、外国人児童生徒教育に関しては、新しい教育課題であり、各学校ともその経験が少ないことから、日本語指導担当者がその役割を担うケースもあります。例えば、外国人児童生徒に対する日本語指導の要否や日本語指導の終了時期の判断、教育委員会への日本語指導講師や通訳者などの配置依頼やその計画立案などの仕事です。これらの仕事についても、最終的な決定は管理職が行いますが、日本語指導担当者が実質的な判断を行ったり、直接行政担当者と交渉や相談を行ったりすることも必要となるでしょう。

学校間の連携・協力

児童生徒の多様な状況、日本語指導の具体的な工夫、保護者との関係の築き方について、近隣の学校の担当教員や、教育委員会配置の日本語指導協力者などとの情報交換に努めましょう。

地域との関係づくり

児童生徒は、学校のみではなく、地域の様々な場面で学び、育っています。児童生徒の生活の場である地域社会と学校が連携することで、外国人児童生徒の学習はより充実したものになります。地域において、ボランティアの日本語教室(地域の日本語支援機関)などが運営されている場合がありますが、学校がそのような教室と協力すれば、子どもたちを学校と社会の両方で見守ることができ、学習内容に連続性を持たせやすくなります。
学校が地域の教育体制づくりの契機を提供し拠点となることは、外国人児童生徒のみならず、日本人の児童生徒にとっても、より良い生活環境の整備につながります。