在籍学級担任の役割

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在籍学級担任の役割

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1)在籍学級での外国人児童生徒の受け入れ体制づくり

学級担任として必要な視点

外国にルーツを持つ児童生徒を学級に受け入れることが決まったら、「言葉が通じるだろうか」「クラスのみんなと仲良くなれるだろうか」「文化の違いで困ったことが起こらないだろうか」など、多くの心配事が浮かんでくるのではないでしょうか。しかし、在籍学級の児童生徒にとって、多様な価値観や文化を知る良い機会であり、学級を豊かにしてくれるプラスの出来事であると理解しましょう。
また、異文化の中で育っていく児童生徒は、言葉の問題や異文化間での価値観、習慣の違いなどについて個々に問題を抱えていることが少なくありません。教師は広い視野を持ち、きめ細かいケアが必要です。

学級活動の工夫

クラスのアクティビティーをしているところ(先生含む)(じゃんけんゲーム・ビンゴゲーム・フルーツバスケット)

「ようこそ、このクラスに入ってきてくれて嬉しいよ。」という気持ちを込めて笑顔で迎えましょう。学級の他の子どもたちとは、新しく仲間が増えたことを共に喜びましょう。外国にルーツを持つ児童生徒は、学習内容の違いはもちろんですが、トイレや着替え、食事などの学校生活で、日本ではあたりまえのことにも、とまどっている場合が少なくありません。担任として、「みんなは言葉が分からない国の学校に入ったら、どうしてほしいですか」と投げかけ、クラス全員で考えましょう。
また、外国にルーツを持つ子どもに、育ってきた環境や生活習慣などの体験談を話してもらうなどして、周囲の子どもたちの見方や感じ方を変えていく工夫が必要です。子どもたちのコミュニケーションを促すためにその子どもの国の言葉で簡単なあいさつをしてみるのも良いでしょう。その国の言葉や文化をトピックとして取り上げて学級活動をするのも良いでしょう。子どもは遊びが一番のコミュニケーションです。コミュニケーションがとりやすい遊び(じゃんけん・ビンゴゲーム・フルーツバスケットなど)を紹介しましょう。


児童生徒個票を作成する

外国人児童生徒を受け入れる場合、言葉の問題が必然的に発生します。そこで前もって管理職や日本語指導を担当する教師などと連携して、必要ならば通訳者を介して体制を整えておくことが大切です。それには、子どもの背景を詳しく把握しておくことが重要です。そこで、児童生徒個票を作成するようにしておくと良いでしょう。複数人いる場合は、学校全体で書式を決め作成します。

学校生活での必要な情報を明確に伝える

学校生活で最低限必要な言葉(学校の言葉を紹介しよう)は、写真や絵カードなどを準備して明確に伝えることを心がけましょう。また、外国人児童生徒もその保護者もまったく日本語が話せない場合があります。その時は通訳者に同席してもらうか、翻訳したものを準備するなどしてきちんと伝えることを心がけましょう。

外国人の子どもに、担任の先生が(学校の体操服)を見せ、体育のときに使うと説明している
伝え方の例
  • 学年や学級、学級担任の名前などはアルファベットなどを使用して伝えましょう。
  • 当面必要な持ち物は、具体物を見せて説明し、入手方法も確認しましょう。
  • 学校のタイムスケジュールは、分かりやすく表示したものを渡しましょう。
  • 学校の電話番号を伝え、電話による学級担任の呼び出し方を説明しましょう。
  • 給食費や教材費など必要な費用と、その納入の仕方も伝えましょう。
  • トイレの場所、児童生徒が利用することになる教室などの施設を案内しましょう。

2)外国人児童生徒の受入れに伴う必要な指導

来たばかりの外国人児童生徒適応状況と配慮事項

外国人児童生徒は、学校や学級への慣れ、そして日本語の習得状況によって、人間関係や授業態度などに変化が見られます。また、受け入れる児童生徒も、月日が経つにつれ、外国人児童生徒に対する意識や態度が変わってくるものです。学級担任がこの変化を認識して、その時期にあった対応ができているかどうかで、外国人児童生徒にも、学級全体にも、大きな影響を与えることになります。

【出会いの時期】
転校生を先生が教室でクラス全体に紹介している

この時期は、情緒的に不安定なので、学校と保護者が相互理解を深め、外国人児童生徒をサポートしましょう。学級での注目度が高く、多くの児童生徒に面倒を見てもらったり、話しかけられたりします。この働きかけに対し、日本語が分からないのであまり関わらない外国人児童生徒もいれば、言葉を教えてもらったり、一緒に遊んだりしてクラスに溶け込んでいく外国人児童生徒もいます。学級担任としては、学級の様子を観察し、笑顔で接し、ゆっくり話すなど配慮をすることが大切です。


【居場所を探す時期】

この時期は、授業の内容を理解するにはまだ十分な日本語ではありませんが、学校に慣れて日常会話は支障なくできるようになります。休み時間などは友達と一緒に行動ができるようになります。しかし、比較的おとなしい内気な子どもは、友人関係の形成が自分だけでは難しく、孤立してしまうことも考えられます。学級担任は、外国人児童生徒の個性を普段から観察し、保護者や学級の児童生徒の話などからしっかり把握しておくことが大切です。そして、友人関係の形成にきめ細かい配慮をし、学級での居場所づくりの手助けをする必要があります。

【調和ととまどいの時期】
外国人児童生徒が、日本人集団(3人くらい)から少し離れたところにいて、日本人児童生徒は外国人児童生徒の悪口を言っている

この時期は、授業の内容については十分ではありませんが、ある程度分かるようになります。外国人児童生徒の個性や母文化の違いもありますが、積極的に発言したり、行動したりするようになります。しかし、この積極性が、日本人児童生徒からは異質に感じられ、学級の友達から疎ましく思われたり、学級担任から「~してはいけない」と注意されたりして、とまどってしまうこともあります。学級担任としては、なぜ疎まれたのか、なぜ注意されたのか、異文化による受け止め方の違いを理解させ、本人にも、他の児童生徒にも異文化をお互いに受け入れる心が育つように、丁寧に指導することが必要です。


【相互理解の時期】
外国人も日本人も仲良くクラスにいる様子 日本人が机で本を見ている。それを日本人と外国人の子どもが肩を組み見ている

この時期は、外国人児童生徒にとっても学級の児童生徒にとっても、お互いの良さを認め、それぞれの良いところを生かしながら、学級が成長できる時期です。

しかし、場合によっては、学級になじめないまま孤立したり、同国の児童生徒の知り合いが他にいる場合は、そこに居場所を求めたりと学級の日本人児童生徒と共に行動ができなくなる場合も出てきます。学校全体で国際理解の取組が行われている場合は、気長にきめ細かい支援を続けることで改善される場合があります。


3)学級での国際理解とは

学級担任の視点

外国人児童生徒を受け入れる学級担任として、受入れのメリットを生かした学級の運営ができると前向きに捉えましょう。 外国人児童生徒の受入れの際に、「言葉の問題」「文化の違いによる問題」の他に、学級の雰囲気や人間関係などの環境によって起きてしまう問題があります。学級担任として、外国人児童生徒も、日本の児童生徒もまったく同じように扱おうとすると、異文化で生活するがゆえに必然的に起こる問題に対して、何の配慮もできなくなってしまいます。

学級担任として大切なことは保護者や児童生徒の立場になって文化の違いとしてどのようなことがあるか考え、情報を集めることが大切です。そして、「総合的な学習の時間」などを中心に、文化の違いを重点におきながら国際理解について学ぶ時間をつくり、受け入れる側の児童生徒に他者を認める気持ちを育むことで成長を促し、受け入れ側の子どもたちの視点をプラスに変革するように働きかけることも必要です。

文化・習慣の違い

具体的な違いとして、宗教の違いによって起こるものがあります。イスラム教徒の場合、個々の差はありますが、豚肉が食べられないので給食が食べられない、ある年齢からは肌を露出できないので体操服・水着の着用が難しい、ラマダン(断食)の時期には食事や水を摂らないなどがあります。

アクセサリーやピアスは民族的、又は宗教的なシンボルとして尊重しなければならないこともあります。食文化も冷たい食事を摂らない国や、昼食時間は帰宅して食べる習慣の国や地域があります。休み時間のジュースやお菓子の飲食が認められている国もあります。→子どもたちの国を知ろう

子どもたちの声

○日本の学校に来た初めのころ、みんなが誘いに来てくれて、とても嬉しかった。でも、遊んでいると、何を言っているのかが分からなくて・・・そうしたら、だんだん誘ってくれなくなっちゃって、みんなと少し距離ができてしまった。私、日本語がだいぶ分かるようになってきたんだけれど、なかなか輪の中に入ることができなくなって、休み時間、一人でいることが増えてきたんだ・・・。

○授業中とか、日本語が分からない時、みんなの前で「日本語が分かりません」ということが、とても恥ずかしいと思っていました。だから、当時の私は分かったふりをしていました。何にも恥ずかしいことじゃないのに、自分自身に嘘をついていました。「分からない」ことを「分からない」ということは、恥ずかしいことじゃないです。それを、私は一番伝えたいです。


4)保護者への対応と進路指導

日本語力や異文化の影響で起こる日本人保護者とのトラブルへの配慮

学級で起こった子どもどうしのトラブルから、外国人の保護者と日本人の保護者とが対立してしまうような場合は、学級担任として特別な配慮が必要になります。無意識のうちに日本の習慣や社会規範で判断してしまうことがあるので、すぐにどちらが正しいか判断しないで、慎重に状況把握に努めてください。

けんかしている絵
【状況把握をしっかりすること】

文化や習慣の違いによる誤解がないか、常に慎重に状況把握をするようにしましょう。外国人に分かりやすい日本語を使って話を聞き、トラブルの原因や行動の動機などを確認し、第三者の見解を聞くなどお互いが納得する話し合いを心がけましょう。

【コミュニケーションスタイルの違い】

文化の違いや、日本語力の問題から、本人が意識するよりもストレートな言い方になってしまうことがあります。このような場合、「失礼だ!」と感情的になるのではなく、相手の本意を把握するように努めましょう。

和解している絵
【双方に意味のある解決を目指そう】

トラブルでの話し合いは、どちらが勝った、負けたというのではなく、両者の願い事の背景をしっかり把握して話し合えば、良い解決の糸口が見つかるものです。

学校からの伝達書類の内容を伝える工夫

外国人保護者は、子どもが学校から持って帰るたくさんの通知文のうち、どれが大事なのか、どれが返事が必要なものなのかが分かりません。そのために、書類が未提出になり、情報が伝わらないまま捨てられてしまう場合があります。

【情報伝達のルール作り】

あらかじめ、保護者と学級担任との間で、ルールを決めておきましょう。例えば、重要な通知文には「IMPORTANT」と赤で書きます。保護者が日本語が読めない場合は、知人や通訳ができる人をあらかじめ頼んでおいて必ず内容を確認してもらうなどのルールをつくりましょう。また、やさしい日本語で書き直したり、必要な連絡事項に母語のメモを付けたりするなど事前にルールを決めておけば、大量の通知文から、必要なものを選び取ることができます。

【いろいろな工夫】

ある程度日本語が理解できる保護者は、ルビを振るだけで、辞書を使って内容を把握することができます。また、長期休みを利用して、家庭訪問をしたり、保護者に学校に来てもらったりして、長期計画で決まっている行事の説明や、子どもの様子を伝える機会を持つことで信頼関係が生まれます。

進路指導

進路相談をする場合は、次のようなことを確認しておきましょう。

【日本の学校制度】

日本の教育制度について、知らない外国人保護者も少なくありません。日本の学校制度は6・3・3・4制など基本的な情報は伝えましょう。中学校では制服や部活動があり、地域によっては弁当が必要なことを伝えましょう。下記の文部科学省のサイトには、英語、韓国・朝鮮語、ヴェトナム語、フィリピノ語、中国語、ポルトガル語、スペイン語でのガイドブックがありますので印刷して手渡すのも良いでしょう。
文部科学省 外国人児童生徒のための就学ガイドブック

【成績と評価について】

小学校でも留年制度がある国もあり、日本では順調に進級しているため問題なく勉強ができていると勘違いしている保護者もいます。学習面でのつまずきについては具体的に保護者に伝え、家庭での関わり方を一緒に考え、子どもの学力向上に努めるよう助言しましょう。

【高校進学について】

高校進学に当たっては、受験しなくてはならないこと、中学校の評価が重要だということを伝えましょう。日本での外国人生徒は高校進学率が平均より低いと言われています。小学校で基礎学力を付けることの大切さ、早い段階から情報収集することの大切さを伝えましょう。

【大学進学について】

日本の大学進学の入試制度は非常に複雑で長期戦に耐える力が必要ですが、保護者が単独で情報を得ることは困難です。大学進学にはそのための心積もりが必要で、ある程度の貯蓄が必要なことなど、機会があれば伝えましょう。