カスミサンショウウオと生息地の山奥の写真

サンショウウオの寿命を考える

私が飼育しているカスミサンショウウオは,平成元年生まれで,人の年齢でいうと平成27年6月で27歳4ヶ月になる。サンショウウオは何年位生きるのか,寿命を知る手掛かりになると思い,27才のカスミサンショウウオの履歴等を紹介したい。

平成元年春に孵化,平成27年で27歳になるカスミサンショウウオ。

1 飼育を始めた理由

私が八幡小学校長の時,平成2年の春,八幡小学校6年生の1児童が,自宅の裏の切幡山でカスミサンショウウオを見つけた。切幡山生息の,初めての発見であり,新聞とテレビに大きく取り上げられ,学校や地域の話題になった。その発見した児童が,卒業前の平成2年3月,大切に飼育していた1匹のカスミサンショウウオを「飼育して下さい」と私に贈ってくれたのである。

妹尾少年の発見は平成2年2月2日の徳島新聞朝刊に報道された。

2 生息発見の切っ掛け

少年は,現在,市場町切幡観音で家業の果樹園を引き継ぎ,ブドウ栽培に取り組みながら切幡山のカスミサンショウウオの保護を続けている妹尾康弘氏である。妹尾君がカスミサンショウウオを見つけたのは,自宅裏山の雪が残る雑草地で,魚釣りの餌のミミズを探していた時,偶然,朽ちたアカマツの倒木の下で冬眠中の2匹のカスミサンショウウオを見つけた。妹尾君は,初めて見る不思議な形の動物に興味を持ち,翌日,学校へ持って行き,担任の先生に事の次第を話した。担任は「何という動物か,図書室で図鑑で調べてみな,そして,判った事を先生にも教えて」,「また,校長先生にも訊ねてみたら」と助言, 少年の取り組みを褒めたそうである。この担任の指導が発端となり,妹尾君の動物への関心は高まり,私との師弟関係が深まっていった。

3 生長の様子

妹尾君は,両親が経営するブドウハウス内の堆肥置き場で見つけた,全長40mm位のカスミサンショウウオを飼育していた。そのサンショウウオを,卒業するので「記念に」と,私に贈ってくれたのである。そのサンショウウオは体の大きさからみて,平成元年に孵化したと考えられる。妹尾君から預かったカスミサンショウウオの現在までの生長の様子は下図の様である。

贈られた時(平成2年の春)から現在までの生長の様子。

4 27年間の飼育の様子

27年間飼育しているといっても,別に手間を掛けてきたわけでもない。時々,水槽の掃除をしたり水替えをする位。性別は不明。4年前から,図の大形水槽に移し,もう1匹のカスミサンショウウオと一緒にしている。水替えをする時,2匹が近づくと慌てて逃げ合うのが不思議である。昼間は,水槽の中に入れてある木株や石の下に潜っており,殆ど姿を見る事はない。今も水槽の掃除の時に,水の中を泳いだり,庭に逃げ出す時の敏捷な動作に驚く。低カロリー,栄養不足は平均寿命を延ばすといわれているが,該当している様に思う。また,繁殖行動皆無も影響しているのではと思う。

児童の心のこもったサンショウウオが生き続けている事は嬉しい。現在も妹尾康弘氏とは生態研究等で互いに交流しあっている。

飼育水槽の内部。中には土の陸地,木株,石等を。水少量,日陰。少し傾斜する。