カスミサンショウウオと生息地の山奥の写真

サンショウウオとは

サンショウウオとはどんな動物

1 サンショウウオはカエルと同じ両棲類

サンショウウオは「カエル」と同じ仲間の両棲類。幼生時代はオタマジャクシと同じで, 水中で生活,えら呼吸である。

サンショウウオの幼生

サンショウウオの幼生

カエルのオタマジャクシ

カエルのオタマジャクシ

2 サンショウウオは有尾類,カエルは無尾類

変態すれば,陸上中心の生活に。エラが消え,肺呼吸,皮膚呼吸となる。ハコネサンショウウオだけは,成体になっても終生鰓呼吸と皮膚呼吸である。 サンショウウオは長い尾があり両棲類,有尾類。カエルは両棲類,無尾類に分類される。

サンショウウオの成体1
サンショウウオの成体2

サンショウウオは体が細長く尾がある

トノサマガエルの画像。トノサマガエルには尾がない。

トノサマガエルには尾がない。

ヤマアカガエルの画像

タゴガエル

3 体の特徴は,サンショウウオとカエルは,よく似ている。

体の形は,サンショウウオは細長く,カエルとは違うが,その他は,手足,指の数,大き い目,皮膚がいつも湿ってヌルヌルしている点など似ている面が多い。

4 サンショウウオは原生林や自然のままの環境にしか生息できない。

黒笠山のサンショウウオがいる渓谷。

黒笠山のサンショウウオがいる渓谷

剣山のサンショウウオがいる渓谷。

剣山のサンショウウオがいる渓谷

Q 徳島県内には何種類のサンショウウオが

A1 深山渓流形サンショウウオが3種類。

3種類のサンショウウオは,四国の東の屋根と云われる剣山山系の標高1000mを越す落葉広葉樹に囲まれた渓谷とその周辺の山肌に生息している。

イシヅチサンショウウオ(オオダイガハラサンショウウオ)。体長20cm位。

イシヅチサンショウウオ(オオダイガハラサンショウウオ)。体長20cm位。

コガタブチサンショウウオ(ブチサンショウウオ)。体長10cm位。

コガタブチサンショウウオ(ブチサンショウウオ)。体長10cm位。

  • イシヅチサンショウウオ(オオダイガハラサンショウウオ)準絶滅危惧種。
  • コガタブチサンショウウオ(ブチサンショウウオ)
  • シコクハコネサンショウウオ(ハコネサンショウウオ),絶滅危惧Ⅱ類。
シコクハコネサンショウウオ(現在新種に登録中)。体長約18cm。

シコクハコネサンショウウオ(ハコネサンショウウオ)。体長約18cm。

A2 平地止水形サンショウウオは,カスミサンショウウオただ1種類。

数十年前までは,県南,県央,県北,県西と,四国山地の麓や讃岐山脈の麓に,広範囲で点在生息していた。平成25年現在では,生息地は大きく減少している様子。絶滅危惧Ⅱ類。

カスミサンショウウオ,体長11cm位。

カスミサンショウウオ,体長11cm位。

サンショウウオのほほえましい生態

親が子を可愛がり,子が親を慕う気持ちは,動物の種族を護る本能であろうか。感情がないと思っている両生類サンショウウオにも,その事を強く感じている。

今までに何度か,サンショウウオの成体が卵や幼生を護っている場面に出合った。その1つは,イシヅチサンショウウオ,コガタブチサンショウウオ,カスミサンショウウオのそれぞれは,「卵のう」の近くで,必ず1匹の親がいて,孵化するまでの1ヶ月以上,「卵のう」に触れたり,周辺を泳いで卵を護っている姿を見てきた事である(図1)

図1 イシヅチサンショウウオが産卵している岩塊を持ち上げると,その下には,必ず,親がいる。

また,シコクハコネサンショウウオも成体が卵を護っていた。いつも,深山調査を支えてくれている,教え子の徳善政明氏が,シコクハコネサンショウウオの産卵トンネルの奧に潜って,ライトで産卵の様子を調べていた時,「卵のう」のすぐ下で1匹の成体を見つけた。捕まえてみるとシコクハコネサンショウウオの雄の成体であった。サンショウウオの生態を知る徳善氏は「産卵時期は終わっているのに」,「手足の全部の指の爪が抜け落ちている,こんなに痩せ細って」,「体を張って卵を護っていたんですね」と興奮気味で云った事が心に残っている。見つけてくれた,やせ細った成体の全身を調べながらシコクハコネサンショウウオも親は子供が無事に産まれる様に頑張っている事を実感,心を打つものを感じた(図2)

図2 黒く鋭い爪はシコクハコネサンショウウオのトレードマーク。卵を守っていた雄の成体は,その爪が抜け落ち,痩せて細くなっていた。発見日,8月17日。

もう1つは,夏に原生林の渓谷で,多分,豪雨等で岩に挟まれたのであろう,前肢の4本指が無くなっているイシヅチサンショウウオの20cm位の成体に出会った。少し気になったので,家で飼育しながら調べる事にした。

家の飼育水槽には,平成26年7月に孵化し,27年の4月に変態した全長63mm位の幼体の先客がいた。一緒の容器で飼育すると,若しかして,20cmの成体が,幼体を食べてしまうかもしれないと心配したが,サンショウウオの親子愛を信じて,同じ水槽で飼育する事にした。40数年前の印象では,サンショウウオの幼生は共食いの習性があると思っていた。しかし,現実に幼生を飼育してみると,共食いは皆無で,むしろ,仲良くお互いが助け合っている様にさえ感じている。サンショウウオは動く小動物には噛みついたり, 人が近づくと岩の下に隠れたり,捕まえようとすると逃げる等々の行動をするが,飼育しているサンショウウオの観察では,幼生同志が戦い合う様な事は,いまだ見た事がない。それでも,同じ水槽の中で過ごす20cmの成体と小さい幼体との関係については心配であった。

図3 親子の愛情が伝わってくる成体と幼体の様子。

ある日,飼育水槽をのぞいてみると,ほほえましい光景に出合った。幼体と成体とが,本当に睦まじく一緒にいる場面を見たのである(図3)。

若しかして,サンショウウオも,親は子を慈しみ,子は親を慕う,あたたかい親子愛や同種族愛の感情を持つ動物なのか,それとも,これは動物の本能なのか。心あたたまる思いであった。

サンショウウオも美しい親子愛や種族愛の行動をする可愛い動物である事を紹介したくHPに取り上げました。

2015, 9,20 記