カスミサンショウウオと生息地の山奥の写真

イシヅチサンショウウオ

1 外部形態。噛んだりは絶対しない。体長約20cm。

4種類のサンショウウオ中では,体長が20cm位で一番大きく,剣山を中心に広く標高の高い山々の原生林の渓谷に生息,徳島県内では生息分布も広く,生息数も他のサンショウウオに比べて多い。一宇中学校の生徒達がよく研究した種類である。体色はルリ色がかった黒色で美しい。

イシヅチサンショウウオの写真

イシヅチサンショウウオ(今まではオオダイガハラサンショウウオと呼んでいた。)

2 生息環境。自然の中の自然。

剣山連峰の原生林に囲まれた渓谷。霧が湧く,落葉広葉樹の渓谷の写真

剣山連峰の原生林に囲まれた渓谷。霧が湧く,落葉広葉樹の渓谷。

剣山連峰の原生林に囲まれた渓谷の写真

3 産卵場所と「卵のう」。5月に渓谷の岩塊の下側に産卵。

渓谷の中の岩塊の裏側に産卵する。

渓谷の中の岩塊の裏側に産卵する。

卵膜を破り孵化して「卵のう」膜内に泳ぎ出た所。

卵膜を破り孵化して「卵のう」膜内に泳ぎ出た所。

4 産卵期は5月、孵化は7月頃、産卵して約40日で孵化。

親は, この様な渦巻き状の「卵のう」二房岩石の裏側に

親は, この様な渦巻き状の「卵のう」二房岩石の裏側に

岩塊に付着した「卵のう」の写真

「卵のう」は直径9cm位の香取線香状で、太さは約17mm。一端を岩塊に付着。

産卵 10 日目の卵のうの中にある卵を見た写真

産卵して約10日経過した卵。卵の表面に陥入の線が判る。生きて発生が進行している証です。

5 孵化と幼生。「卵のう」の一端から次々と泳ぎ出る。

「卵のう」から幼生が泳ぎ出る様子のスケッチ
孵化直後の幼生は、大きな腹卵黄と大きなエラを持つ。幼生の体長約50mm。

「卵のう」には約15個の卵。孵化直後の幼生は、大きな腹卵黄と大きなエラを持つ。幼生の体長約31~34mm。

孵化直後の幼生の大きな腹卵黄のアップ写真

孵化直後の幼生。大きな腹卵黄を抱えている。一杯に広げている赤味を帯びた長い糸状のものはエラ。前後肢は出来ていない。

6 孵化直後の幼生は体長31mm。

孵化直後の姿。クモの巣の様な大きいピンクの鰓が特徴。体長31~34㎜。

孵化直後の姿。クモの巣の様な大きいピンクの鰓が特徴。体長31~34㎜。

7 孵化後約10日で前肢が,約1ヶ月で後肢に5本指ができ,前後肢は完成する。

孵化10日目の幼生の写真

孵化して10日目。前肢に4本の指が完成する。後肢はヒレ状である。

孵化31日目の幼生の写真

孵化して31日目,後肢には5本の指ができている。

孵化直後の幼生の写真1
孵化直後の幼生の写真2

前後肢の完成には約1ケ月かかる。幼生は,顎の両側に櫛状の3本の鰓を広げている。この鰓で,小さな滝を流れ落ちる清涼な水に溶け込んでいる酸素を吸収する。

孵化52日目の幼生の腹卵黄のアップ写真

孵化後52日経った幼生の腹卵黄。腹の中に小さくなった腹卵黄の黄色が見える。

腹卵黄の役目は,前後肢を完成させ,充分活動出来る身体に育てるまでの栄養分。孵化時には大きかった腹卵黄は,8月下旬には殆ど消化されて無くなっている事がわかる。

8 普通は幼生で越年し,次の年の夏頃に変態。

夏の終わり頃から変態が始まる。鰓が消え、体の色が黒くなってくる(図内下のイシヅチサンショウウオ)。

8月頃に変態する。鰓が消え、体の色が黒くなってくる(下)。

夏の終わり頃から変態が始まる。鰓が消え、体の色が黒くなってくる(図内下のイシヅチサンショウウオ)。

変態したばっかり。体長60mm。肺呼吸,皮膚呼吸に変わる。よく泡をはく。

鰓が消え、目が突出し、尾びれが消えかかった幼生の写真
頭部がはっきりし、先端が尖ってきた幼生の写真

鰓が消え,目が突出し,尾ビレが消えていく。頭部がはっきりし先端が尖ってくる。動きも敏捷になる。

変態を終えたばかりの成体が生きたミミズを補食している写真

変態を終えたばかりのイシヅチサンショウウオ。(越冬してきた幼生)全長約60mm。黒色であった身体に白い斑点が出来てくる。ミミズを食べている。8月中旬。

9 雌雄の区別。

雌。先端細い。

雌。先端細い。

雄。尾の先端ヘラ状。

雄。尾の先端ヘラ状。