ネットを取り巻く闇

インターネットを取り巻く危険について、特に子どもに対する危険―

インターネットを取り巻く危険、特に子どもに対する危険について、インターネット上でも様々な団体(関係省庁・大学・都道府県)や個人が発表されていますが、ここでは、文部科学省が,「子どもとインターネット」に関するNPO等についての調査研究「第2章インターネットの有用性と危険性」のページに掲載されている主なものについて紹介します。
インターネットは様々な有用性がある反面、特に子どもにとっては危険性も潜在しています。その危険性の主なものは、次のとおりです。

(1)有害サイト

様々な情報が氾濫するインターネットには、不適切な有害サイトも少なくない。有害情報が子どもの心身に及ぼす悪影響が懸念されている。さらに掲示板(インターネット上で特定のコミュニティに属する者や、特定の状況下にある者を対象として、情報交換や会話・議論などを行うことができる場所)やチャット(インターネットを含むコンピュータネットワーク上のデータ通信回線を利用したリアルタイムコミュニケーションのこと)などでは、嫌がらせ・中傷・脅迫などの不快なメッセージや大人の会話にさらされる危険性もある。

(2)犯罪

有害サイトの中には、犯罪を誘発するような悪質なものもある。子どもが危険な人物と出会うおそれもあり、最悪の場合は、犯罪に巻き込まれるケースもある。さらには児童買春の危険にさらされたり、場合によっては子ども自らが加害者になってしまう場合もある。

(3)虚偽情報

インターネットの情報の中には、事実と異なる虚偽の情報やデマ情報も数多く含まれている。虚偽の情報を安易に信じてしまうと自分が被害者になるだけでなく、他者に迷惑をかけたり、自ら虚偽情報の発信者になってしまうおそれもある。

(4)プライバシー(個人情報)

情報化社会における個人情報は経済的価値が高い。知識や経験の乏しい子どもを狙って様々な個人情報を引き出そうとするものが少なくない。また、不正アクセスによって個人情報が違法に盗み出されることもある。

(5)コピーライト(著作権)

インターネットのデジタル情報は、ダウンロードやコピー&ペーストなどで容易に複製・加工できるため、著作物の権利処理に関して十分な知識がないと、自らが著作権法違反で訴えられる危険性もある。

(6)悪徳商法、虚偽広告

代金を先払いしたのに商品が届かなかったり、送られてきた商品が偽物だったりという詐欺まがいのトラブルが少なくない。ネット広告や個人が掲示板に掲載している商品情報の中には、虚偽のものもある。虚偽の情報によって強引に商品を売りつけたりお金をだましとったりする違法な商行為もみられる。

(7)迷惑メール、違法メール

受信者の意思に関わらず、一方的に繰り返し送りつけられる迷惑メールは、通信費用が受信者にかかる上、他者へのストーカー的嫌がらせ行為や誹謗中傷、悪質商法や違法行為、他者システムに対する攻撃などに悪用される場合がある。

(8)不正アクセス・ウィルス

不正アクセスによって個人情報が違法に盗み出されることもある。また、個々の情報システムの破壊などを目的としたコンピュータ・ウィルスは、多くのシステムに甚大な被害をもたらす。メールを通してウィルスに感染するケースが多く,送られてきたウィルスが自動的に他者に転送され、子ども自らが加害者になってしまうおそれがある。

(9)他者の誹謗・中傷

匿名で書き込みができる電子掲示板では、他者への誹謗や中傷,特定の人々・グループ等に対する差別的な発言など、人権を脅かす行為も少なくない。特に、子どもにとっては、不快な言葉や恐ろしい表現、大人の会話等にさらされる可能性が高く、子どもの精神に大きな負担をかけることもある。

(10)身体的悪影響

パソコンの長時間(長期間)利用は、視力や体力の低下など、健康に悪影響を及ぼす危険性がある。身体的発達の未熟な子どもの場合、電子的刺激によるてんかん発作や吐き気、頭痛、身体の硬直、震えなどの症状が出ることもある。このほか、生体機能に大きな影響を与え、白血病やガンなどの原因とも言われる電磁波の影響も懸念されている。

(11)心理的悪影響

インターネットに氾濫する様々な有害情報は、子どもの精神的発達だけでなく、価値観やモラルにも悪影響を及ぼすおそれがある。不快な言葉や大人の会話に触れることで、心理的ダメージを受ける場合や、ネット上での仮想的な人間関係に没入し、生活上の支障を引き起こすネット中毒ないし依存症の事例も見られる。

(12)デジタル・ディバイド(情報格差)

情報化社会の進展に伴い、国や地域、企業、学校、家庭などにおける様々な情報格差が問題になっている。社会の進歩から取り残された「情報弱者」の存在が指摘されている。また、家庭における親子間の情報格差も、家族のあり方や親子のコミュニケーションに様々な影響をもたらすものと指摘されている。
【参照】
文部科学省「子どもとインターネット」に関するNPO等についての調査研究「第2章インターネットの有用性と危険性」
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/030301b.htm

警察庁・警視庁の啓発動画

警察庁や警視庁では,インターネットを取り巻く危険について,動画でわかりやすく解説しています。

警察庁

http://www.npa.go.jp/cyber/video/index.html

警視庁

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anzen/movie/cyber.htm

ネット時代のメンタルケア

インターネットと心の病

2012年、スウェーデンのヨーテボリ大学が20才~24才の男女4、100名に対して行った調査で、「パソコンや携帯電話で長時間ネットを使っている人は睡眠障害や心の病気になりやすい」という研究結果が発表されました。
1年に渡る調査の結果、パソコンや携帯電話を長時間使用する人は、ストレスが増加し、うつをはじめとした心の病気や睡眠障害になりやすいことがわかったそうです。
研究チームのリーダーであるSara Thomee氏によると、パソコンと精神疾患には強い関係があるそうです。Thomee氏は「人はパソコンの前にいると、ネットサーフィンやSNSに夢中になり、ついつい予定していた時間より長くパソコンを使いがちです。これが他のやらなければならないこと、またはやりたいことをやる時間を奪ってしまいます。それが知らず知らずのうちに心に負担をかけてしまいストレスとなって、精神疾患と強い関係をもたらします。」「精神疾患にかからないためにも、時間を守って使用する必要があると言えます」と語っています。
また、東日本大震災の取材を続けたあと体調を崩し、休みを取って故郷徳島に帰り、徳島の病院で「うつ病」の診断を受けた元ニュースキャスターの丸岡いずみさんは、2013年9月20日に発表した自身の著書『仕事休んでうつ地獄に行ってきた』(主婦と生活社)の中で、インターネット上に流れた丸岡さんのうつ病に関する記事が丸岡さんを追い詰めた、と言っています。その記事を見て心配した友人や知人から一斉にメールが届き、「私のことに構わないで。お願いだから、放っておいて!」とすっかり心を閉ざしてしまい、そこから体調は悪化の一途を辿って行ったそうです。
その後、適切な治療や、薬の服用、信頼できる家族や現在のご主人のサポートもあり、快方に向かいました。

ネット時代のメンタルケア

ネット依存症とはいかないまでも、多くの人が多くの時間パソコンやスマホでインターネットにアクセスしている現在、それをすぐに捨てるというのは不可能ですが、病気になってしまった場合はもちろん、「眠れない」、「不安な気持ちになる」、「気分が落ち込む」、「集中力や意欲が低下する」、「疲れやすくなる」、「感覚が妙に敏感になる」などの症状が出たらパソコンやスマホに触れずに静かに休むことが必要です。
自分で時間を決めて使用する、というセルフケアができればよいのですが、若年層の場合はなかなか困難だと言えるでしょう。上記のような症状が出たとしても、なかなか自分から言い出せなくて、症状が進み発病し、自殺に至るケースがあります。
警察庁の平成25年の調査で、未成年者の自殺の原因で最も多いのは「学校問題」で159件です。次に多いのが、「健康問題」で117件です。病気の悩みのうち心の病気が99件(うつ病42件,統合失調症25件,その他の精神疾患32件)と大多数を占め、身体の病気は、12件にすぎません。
精神科医の宮田雄吾氏は、その著書「14歳からの精神医学―心の病気ってなんだろう」の中で、「リスカ(リストカット)をする子をみていていつも思うのは、自分の想いを言葉にするのが本当に下手な子が多い。自分の言いたいことを言葉で伝えられるようになることが最強の対抗策だ」と言っています。
子どもにとって、家族や信頼できる大人に相談することが、一番のケアになるのですが、相談できる(自分の言いたいことを言葉で伝えられる)環境を(社会的、物理的、精神的に)整え、広く知らしめることが重要だと考えます。

【参照】
内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課
平成25年中における自殺の状況
宮田雄吾著(日本評論社)
「14歳からの精神医学―心の病気ってなんだろう」