スマホ世代の闇

スマートフォンの普及率と若年層の利用率

スマートフォン(以下スマホ)の国内普及率は、2014年8月の日経BPコンサルティング社の調べによりますと、総人口比(総務省の人口統計を使って国内の人口構成に合うように補正)で36.9%です。
その中で、若年層の利用率は非常に高くなっています。女性の15~19歳では78.5%、同20~24歳では73.5%、また男性の15~19歳では77.0%に上っています。
【参照】
日経BPコンサルティング 2014年8月29日 ニュースリリース
http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/news/2014/0829sp/

スマホを利用する若年層が受けた被害の例

ネットいじめ

文部科学省発行の「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)によりますと、ネットいじめを次のように分類しています。

① 掲示板・ブログ・プロフでの「ネット上のいじめ」
i)掲示板・ブログ・プロフへの誹謗・中傷の書き込み
インターネット上の掲示板やブログ(ウェブログ)、プロフ(プロフィールサイト)に、特定の子どもの誹謗・中傷を書き込み、いじめにつながっている場合もあります。
ii)掲示板・ブログ・プロフへ個人情報を無断で掲載
掲示板やブログ、プロフに、本人に無断で、実名や個人が特定できる表現を用いて、電話番号や写真等の個人情報が掲載され、そのために、迷惑メールが届くようになったり、個人情報に加えて、容姿や性格等を誹謗・中傷する書き込みをされ、クラス全体から無視されるなどのいじめにつながったりしたケースがあります。
iii)特定の子どもになりすましてインターネット上で活動を行う
特定の子どもになりすまして、無断でプロフなどを作成し、その特定の子どもの電話番号やメールアドレスなどの個人情報を掲載した上、「暇だから電話して」などと書き込みをしたことにより、個人情報を掲載された児童生徒に、他人から電話がかかってくるなどの被害があります。

② メールでの「ネット上のいじめ」
i)メールで特定の子どもに対して誹謗・中傷を行う
誹謗・中傷のメールを繰り返し特定の子どもに送信するなどして、いじめを行ったケースがあります。インターネット上から、無料で複数のメールアドレスを取得できるため(サブアドレス)、いじめられている子どもには、誰からメールを送信されているのか判らないこともあります。
ii)「チェーンメール」で悪口や誹謗・中傷の内容を送信する
特定の子どもを誹謗・中傷する内容のメールを作成し、「複数の人物に対して送信するように促すメール(チェーンメール)」を、同一学校の複数の生徒に送信することで、当該生徒への誹謗・中傷が学校全体に広まったケースがあります。
iii)「なりすましメール」で誹謗・中傷などを行う
第三者になりすまして送られてくるメールのことを、「なりすましメール」と呼んでいます。なりすましメールは、子どもたちでも簡単に送信することができます。クラスの多くの子どもになりすまして、「死ね、キモイ」などのメールを特定の子どもに何十通も送信した事例などもあります。
【参照】
文部科学省「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08111701/001.pdf

他にもネットいじめの例として、LINE(無料通話アプリ、通話やメールに加えてグループを作ってメッセージを共有する機能もある)で「既読スルー」(LINEにおいて送信されたメッセージを相手が読んでいる(送信者の画面には既読という文字が表示される)にもかかわらず、返信されない(できない)こと)をしてしまったため、所属しているグループの友人から無視され、いじめにあったというケースがあります。

2スマホ依存

総務省が、2014年1月に都立高校154校に対して行ったインターネットの依存傾向についての調査(有効回答15,191票)で、ネットを利用する機器と利用時間について尋ねたところ、ネット利用率が高いのはスマホで全体の83.6%でした。機器毎(パソコン・スマホ・タブレット)のネット平日1日の利用時間は、スマホの利用時間が161.9分とパソコンやタブレットに比べて圧倒的に長いことがわかりました。また、スマホの利用により減った時間について尋ねたところ、「勉強時間が減った」と答える生徒が34.1%もいました。
とくに、スマホを含む携帯電話の利用時間が1日262.8分という平均値の、インターネット依存傾向「高」と分類された高校生は、かなり深刻です。「睡眠時間が減った」が74.6%、「勉強時間が減った」が67.7%、「引きこもり気味になっている」が49%、「学校に遅刻したり欠席したりしがちになっている」が35.8%で、日常生活や学業、そして対人関係に影響が出ている生徒が過半数という状況です。
身体にも影響が出ています。2011年、全国で初めてネット依存の専門外来を設置した国立病院機構久里浜医療センターでは、最初の2年間で受信した人は100人以上で、その半分近くが中高生で、多くは「昼と夜が逆転している」ほか、「眠りが浅い」、「体格が小さい」、「骨がもろい」といった身体的な特徴があるそうです。長時間ネットにしがみつく生活を繰り返していることの影響とみられています。
【参照】
総務省「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査報告書」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000302914.pdf
NHK解説委員室:時論公論「心配 中高生のスマホ依存」2013年8月30日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/166140.html

3ワンクリック詐欺

「ワンクリック詐欺」とは、年齢確認等の画面をタップ(押すこと)したら、「登録完了」と画面に表示され、高額な年会費等を請求されたりする、サイト上の詐欺です。不正請求されても端末情報から個人情報はわからないのですが、焦りから「退会」と表示されたボタンをタップし、その後表示されるメール画面でメールしたことで個人情報が知られ、高額請求された例があります。

4フィッシング詐欺(不正アプリ使用による個人情報の流出)

モバイル向け不正サイトは、2012年末には、2万2,700件だったのですが、2014年6月末には9万5,600件に上り、1年半で約4倍に増加したことが明らかになっています。(トレンドマイクロ社調べ)友人からの誘いで不正サイトにアクセスしたり、メール・SNSから不正サイトに誘導されアクセスして、個人情報が流出する被害が後を絶ちません。

5なりすまし

・年齢・性別詐称
SNSで知り合った同学年の女生徒が実は成人男性とは知らず、自分の裸の写真を相手に送ってしまい、ある日突然「ネットでばらまくぞ」と脅され、脅しがさらにエスカレートしていったという例があります。
・乗っ取り
親しい友人が、IDとパスワードをさまざまなサイトで使い回ししていたため、IDとパスワードが漏れ、メッセージ交換アプリを乗っ取り、親しい友人になりすまし、コンビニで電子マネーのプリペイドカードを購入するよう要求。友人と信じてプリペイド番号を友人になりすました相手に教えてしまい、お金をだまし取られた例があります。

被害者や加害者にならないために

1ネットいじめの場合

スマホやインターネットが有しているメディア特性やネット上のトラブルの実態等について、子ども・保護者・教師がしっかりと学び、互いに話し合い、理解を深めることが重要です。
「情報モラル」(ネットワーク上のルールやマナー、危険回避、個人情報・プライバシー、人権侵害、著作権への対応など)についてもしっかりと学び、スマホの取り扱いに関して共通のルールを作成し、徹底することが必要です。
そのためにe-ネットキャラバン(文部科学省、総務省が通信関係団体等と連携して、主に保護者や教職員を対象としたインターネットの安全・安心な利用に向けた啓発のための講座を、全国47都道府県で実施している)を利用するのは、有効な手立てだと考えます。
e-ネットキャラバン
http://www.e-netcaravan.jp/index.html

2スマホ依存の場合

スマホは、電話機能付きの小型パソコンです。パソコンの前に座らなければ利用できなかったネットを、手の中に四六時中持ち歩ける状態になったということです。
そんな状態で、「ネットいじめ」の項でも書きましたが、LINEでいったんグループトークを始めると、「既読」の仕組みがあるため「読んでいるのに返事をくれない」と思われることが不安で、なかなか抜けることができません。仲間はずれにされるのを恐れ、何時間も返事を繰り返すことになります。
そこで、子どもとスマホの問題に詳しい専門家は、子ども同士でスマホの利用の仕方について話し合いをさせてみることをすすめています。LINEのトークが際限なく続く状況について、誰もがおかしいと思っているのに、疑心暗鬼になってやめられないでいる。一人が眠くなって「お休み」と書いたら、トークをやめても大丈夫なんだと理解しあえば、自ずとそんな状態から抜け出せるというのです。
スマホ依存の場合は、子どもたちが自分たちで考え、自身で気付くことが重要です。
【参照】
NHK解説委員室:時論公論「心配 中高生のスマホ依存」2013年8月30日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/166140.html

3ワンクリック詐欺の場合

不正請求にあっても端末情報から個人情報はわからないので、無視するといいでしょう。メールや電話をすると個人情報が知られることになりますので、絶対にしてはいけません。
また、フィルタリングも重要です。スマホでWiFiなどの無線LAN接続した場合、携帯電話網を通らないので、従来の携帯電話のフィルタリングサービスは役立ちません。したがって若年層が使用する場合、保護者が責任をもってスマホ本体に「フィルタリングアプリ」を挿入するといいでしょう。

4フィッシング詐欺の場合

アプリは、信頼できるマーケットから入手し、提供元不明のアプリはインストールしないようにしましょう。提供元不明のアプリをインストールしようとすると警告が出ます。アプリのアクセス許可権限を必ず確認し、不審なものはインストールを中止しましょう。
また、各メーカーが提供しているセキュリティサービスを利用し、セキュリティ対策を万全にしましょう。

5なりすましの場合

・年齢・性別詐称
ネット上では、相手が見えません。見ず知らずの人からの会いたいなどの誘いにはのらない、個人情報がわかる書き込みや写真を掲載しないようにしましょう。また自ら出会いを求める書き込みをすると、内容によっては、18歳未満の児童でも処罰の対象になったり、犯罪に巻き込まれる恐れがあります。
また、スマホは、位置を割り出すGPS機能を搭載しています。GPS機能を切らずに情報を公開した場合、第三者に位置情報を知られてしまう恐れがあります。位置情報を知られたくない場合はGPS機能を切って使用してください。

・乗っ取り
IDとパスワードは使い回しをせず、サイトごとに使い分けるようにしましょう。また、親しい友人からの要望でも、金銭の貸し借りに関するものは拒否し、必ずその友人に確認するようにしましょう。

すべてにおいて

全てにおいて
全てにおいて共通することですが、トラブルに遭って不安を感じたり、困った場合、一人で悩まずに、家族や先生、警察など信頼のできる人に相談しましょう。ネット上にも様々な機関の相談窓口や通報窓口があります。

相談通報窓口

・都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧
http://www.npa.go.jp/cyber/soudan.htm

相談窓口

・警察庁のインターネット安全・安心相談
http://www.npa.go.jp/cybersafety/
・IPA(独立行政法人情報処理推進機構)
http://www.ipa.go.jp/security/anshin/

違法・有害情報の通報窓口

・セーフライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)
https://www.safe-line.jp/

最後にもう一度

知ることと話し合うこと

知ること
スマホを使う人はもちろん、使わなくても使っている人の周りにいる人もスマホの機能や使用方法、スマホを取り巻く現状を知るべきです。
話し合うこと
スマホについて知ったうえで,使う人とその周りにいる人は,スマホの使い方についてとことん話し合い,使用上のルールを決め,それを実行すべきです。